「とびきり話しかけやすい先輩」になるために、私が心がけていること
新しく組織にジョインしたメンバーは、こんな悩みを抱えがちです。
- この問題は誰に相談するべきなんだろう…
- こんな基本的なことで時間を奪ってしまっていんだろうか…
- 初絡みの人には緊張するので、いつもよりも疲れるな…
特に、リモートワークでは偶発的なコミュニケーションが生まれづらいため、相談のハードルが高くなりがちです。
弊社では「チューター制度」という、新メンバーが孤立することなく、スムーズな一人立ちを支援することを目的とした制度があります。サポートする人を「チューター」、サポートを受ける人を「チューティー」と呼び、以下のような効果を期待しています。
- 孤独の取り除き
- スキル課題の解決(広告の専門知識、専門ツールの知識、効率的な業務の進め方、など)
- 人脈課題の解決(クリエイティブに関する課題、技術的な課題、バックオフィスに関する質問、など)
この制度には、「チューターは ”とびきり話しかけやすい人” になろう」というコンセプトがあります。チューターが「話しかけやすい人」になることに徹することで、新メンバーの心理的安全性を確保し、相談しやすい環境をつくります。
この記事では、私がチューター制度を通して学んだ「話しかけやすい人」を実現するための方法や、新メンバーが安心して業務に取り組むためのTipsを共有します。
そもそも「話しかけやすい」とは?
「話しかけにくい人」から考える
私がチューターの依頼を受けたとき、どんな人であれば「話しかけやすい=相談しやすい」のかを考えることからスタートしました。
一言に「話しかけやすい」と言っても、切り口はたくさんありますし、受け手次第でいかようにも解釈できてしまうので、なかなか定義づけが難しいなと感じました。
そこで発想を転換し、「話しかけにくい人とはどんな人か」を考えてみました。
私の思う話しかけにくい人は…
- いつも忙しそう
- 作業をしながら話す
- 人となりが分からない
- 約束を守らない
- 声色、表情が怖い
- 質問したことに答えられない
- 凄すぎる人(弱み、弱点がない人)
といった特徴があるように思います。
これらをまとめてみると、
- パーソナルな情報の不足
- 信頼の欠如
- スキルのギャップ(が大きいと感じてしまうこと)
の3つに分類できそうです。
一つひとつ紐解いていきます。
1. パーソナルな情報の不足
「良い関係づくりには自己開示が大切」ということを知っていたとしても、もし自分が新メンバーの立場だったら、慣れない環境では、「したくない」のではなく「うまくできない」だろうなと思います。
なので、チューター側から、趣味や学生時代の思い出話や、得意なことや不得意なこと、どんな経緯でいまここで働いているのか、といった「背伸びしない自分を晒す」ことが大切だと考えました。
そこで、下記のような「自己開示を目的としたシート」をつくり、最初の1on1で新メンバーに伝えることにしました。
また、チューティーから「趣味は野球観戦」「部活・サークル活動はバンド」とうことを事前に聞いていたので、それらに共通する話題も取り入れつつ、「野球とか音楽はぜんぜん詳しくないので教えてー」といった感じで、対等に会話ができる空間づくりも意識しました。
正直、学生時代の失敗エピソード(色々あって3年遅れで大学を卒業しています)や、仕事で大変な思いをしたときの話をするのは、私にとっても心理的なハードルは高かったです。
でも、これらの経験が、いまオーリーズで働く理由や実現したい未来のイメージにつながっていて、私の根っこにもなっていることなので隠さず伝えました。(これについての新メンバーから感想はまだ聞けていないので、いつか聞いてみたいです。)
結果的に、この自己開示が相手のキャラクターを知るきっかけにもなりました。相手が共感してくれたり、「実は自分も似た経験が~」といった開示をしてくれる呼び水になりました。
2. 信頼の欠如
「相手がどんな人なら、自分の秘密や弱みを話せるか?」と聞かれたら、私は「信頼できる人」と答えます。気軽に相談してもらえる関係をつくるためには、やはり「信頼」はもっとも重要なキーワードです。
逆に「信頼されない人はどんな人が」という視点から、そうならないために私が取り組んでいる工夫をご紹介します。
私が意識していることは以下の通りです。
- 自分で決めてもらう
- 一気に踏み込まない
- 「大丈夫?」と聞かない
- 忙しそうにしない(オフラインで話すときはPCを作業を止める)
- リスケ案はこちらから出す
書き出そうと思えば他にもありますが、特に気をつけたいものをピックアップしました。
自分で決めてもらう
チューターとチューティーの関係は「上司と部下」ではありませんから、あらゆる観点で「対等」であるべきです。
そのため、チューターが一方的にものごとを決めるのではなく、チューターの時間の使い方や、チューター制度用の経費の使い方などについて、意思決定は新メンバーにおこなってもらいます。例えば、「1日30分の1on1ミーティングをいつ行うのか」を決めてもらう、などです。
チューターが決めた方が早いことも多いと思いますが、お互いが対等な関係であることを、チューティーが「決定する」という経験によって理解することは重要だと考えています。
一気に踏み込まない
こちらが自己開示をしたからといって、相手が話しかけやすいと感じてくれているとは限りません。「自分が心理的なハードルを越えたんだから、相手も越えてきてくれるはず」と誤解しないように気をつけています。「今週は、まずは業務面の不安解消に専念して、来週~来月あたりからパーソナル部分を共有していこう」といった感じで、焦らずに、接触回数を増やしながらゆっくりと自己開示していくことを意識しています。
「大丈夫?」と聞かない
これは、わたしが最も気をつけていることで、ぜひおすすめしたいTipsです。
困っている人でも、「大丈夫?」と聞かれると、なぜか「NO(大丈夫じゃない。助けてほしい)」と答えづらくなるものです。これには、「大丈夫?」という言葉には、尋ねる側の「大丈夫だろう、大丈夫であってほしい、という予測や願望」が見え隠れしていて、相手にそれが伝わってしまうからではないかと思います。相手は、意識か無意識か、それらに配慮した回答をしてしまうことがあります。
代わりに私は、「困っていることはある?」と聞くようにしています。こちらの方が、断然「YES(あります。助けてください)」と言い易くなります。聞き方一つで、答え易さはこれだけ変わります。
忙しそうにしない(オフラインで話すときはPC作業を止める) / リスケ案はこちらから出す
話しかけやすい雰囲気を作ることは、チューターが磨くべき「技術」だと考えています。そのために、まず心掛けるべきことは、「あなたの話を聞くことは、誰かに強制された”やらされ仕事ではない”」ということを態度で示すことです。
具体例を挙げると、
- オフラインで話をしているときは、PCから手を放して話を聞く
- 予定された面談をこちらの都合でリスケジュールする際は、こちらから代替案を出す
私だったら、いつも忙しそうで、タイピングをしながら話を聞く相手には相談のしづらさを感じてしまいますし、びっしり埋まっているカレンダーに相談を差し込むのは気が引けてしまいます。
3. スキルのギャップ
何でも知っている「凄すぎる先輩」には、どんな印象を持つでしょうか。憧れや畏怖の感情を抱いてしまい、「初歩的な質問をするのは恐れ多い…」と感じてしまう人は少なくないと思います。
もちろん、皆が憧れるエースのような人は、組織を引っ張っていく上で貴重な存在ですが、チューターの役割という観点で見れば、凄すぎる先輩はむしろ畏敬の対象となり、どうしても「話しかけやすい人」からは遠ざかります。一方で、いつも回答やアドバイスが曖昧で、何を相談しても解決しない頼りない先輩にも、相談する気にはなれません。
なので私は、この狭間にある「一歩先輩」であることを心がけています。
具体的には、例えば、新メンバーから答えられない質問を受けたときには、「わからない」と正直に伝えつつ、どうしたらいいか一緒に考えるスタンスを取るようにしています。なんでも答えられる先輩は凄くてかっこいいですが、チューターの目的は「とびきり話しかけやすい人」です。凄い、適わない、と思われない技術も必要です。
分かることは答える、分からないことは一緒に考える、というスタンスを持つことで、「親近感と頼りがいのある先輩」になることを心がけています。