Amazonスポンサー広告のはじめ方 ~各種機能の所感と運用のコツ~
私が半年間、Amazon広告を運用した中で得らた知見を共有します。
今回は、キャンペーン設計の考え方について、「①広告タイプ」「②ターゲティング」の観点で、個人的な所感を交えつつまとめてみました。
※掲載している各種キャプチャは、あくまでも説明用サンプルとして参考にしたものであり、弊社との取引に関係するものではありません。ご了承ください。
広告タイプ
Amazon広告では、大きく3種類のキャンペーンを作成することができます。管理画面より「キャンペーン作成」を選択すると、以下の画面が表示されます。(21年12月時点)
①スポンサープロダクト広告
スポンサープロダクト広告(以下、SP広告)はAmazon広告のメインとも言えるキャンペーンです。他のキャンペーンよりも表示される広告枠が多く、配信ポテンシャルが大きいです。
主要な配信面は、以下のような検索結果画面であったり、
以下のような、商品詳細ページの「関連する商品」になります。
また、キャンペーン設定の「掲載枠」項目で、特定の配信面に対する配信を強化することができます。例えば下図だと、「検索画面の上部での表示」に対し入札単価を2倍にする設定しています
②スポンサーブランド広告
スポンサーブランド広告(以下、SB広告)は、配信ポテンシャルはSP広告と比較して大きくはないですが、検索結果画面の目立つ位置に表示されるため、高いROASと認知効果が期待できます。
また、SB広告は大きく「バナー」と「動画」の2種類に区分されます。
バナー広告
検索結果画面の最上段に表示される広告です。商品を検索すれば必ず目に入る箇所に表示されるため、高い認知効果が期待できます。また、私の経験上、配信量が大きく伸びることは稀で、ROASが総じて高くなる傾向にあるのが特徴です。
下図の例では、「ロゴ+見出し文」と「選択した商品3つ」 が表示されていますね。
「選択した商品3つ」をクリックすると、該当商品のストアページへ遷移します。ちなみに、商品の在庫が切れているときは、当該商品箇所が空欄になり、3つとも在庫が切れしているときは、広告配信が停止されます。
「ロゴ」をクリックすると、商品のストアページへ遷移します。ストアページは、「①専用で作成されたストアページ」と、「②即席で作成されたストアページ」の2パターンが作成可能です。
①専用ストアページ例:
画像付きの豪華なストアページです。こちらはAmazonのセラー向けの、ベンダーセントラルというダッシュボードから作成・編集する必要があり、Amazon広告の管理画面では編集ができません。
2.即席ストアページ例:
ロゴや画像を追加する必要のないストアページです。上記の「選択した商品3つ」以外の商品を追加することができ、Amazon広告の管理画面から作成することができます。
ストアページをどの程度作りこむべきなのか?については議論があるかと思いますが、私の意見としては、②即席ストアページで十分だと考えています。
というのも、SB広告が表示された際にロゴをクリックしてストアページへ遷移するユーザーは、決して多くないからです。(Amazonさんに伺ったところ、具体的な比率は社外秘とのことでした。)
ちなみに、上記では「ロゴ+見出し文」と「選択した商品3つ」というフォーマットを前提にご説明しましたが、「バナー画像のみ」でもSB広告の入稿は可能です。
動画広告
動画広告は、近年追加された新しい機能です。指定した商品1つと共に、検索画面の中段にクリエイティブが大きく表示されます。
この通り、画面の占有率が高い点が特徴です。また、SB広告やSP広告のバナークリエイティブと比較して、私の経験上、同じクエリでもCTRは倍以上だったのが特徴的でした。
ただし、CTRが高い一方で、ROASはバナーSB広告よりも低い傾向にありました。そのため、ユーザーの注意を引く効果は高いですが、短期的な売上には繋がりにくい広告と解釈できます。
スポンサーディスプレイ広告
スポンサーディスプレイ広告(以下、SD広告)は、検索画面や商品詳細ページに表示される広告です。他の広告タイプと比較すると、低い単価で露出を増やすことができます。最近でも多くの機能が追加されているため、今後も機能拡張が期待できそうです。
その一方で、ターゲティングによってはROASが大きく低下するデメリットもあります(後述)。
実際の露出イメージは以下の通りです。
①検索結果画面
②商品詳細ページ
広告タイプまとめ
広告タイプ別の特徴をまとめると以下の通りです。これからAmazon広告をスタートし、大きく露出させたい場合は、「SP > SB > SD」の優先度で配信するのがよいかと思います。
ターゲティング
続いて、ターゲティングの種類をご紹介します。上記の広告タイプに応じて、対応しているものと、そうでないものがあるため注意が必要です。
キーワード
スタンダードなターゲティングです。設定したキーワードを検索したユーザーに対して広告を配信します。
マッチタイプには「完全一致」「フレーズ一致」「部分一致」がありますが、ターゲティングの精度上 「完全一致」「フレーズ一致」の利用をお勧めします(21年12月時点の個人的な所感)。実際、部分一致を試験的に設定した事があるのですが、配信量があまり伸びない経験をしました。(部分一致はけっこう使えるよ、という情報があればぜひご教示ください!)
また、基本的に、1つの広告グループで設定できるキーワード数は1,000個までです。Google広告等と比較すると制限が強いと感じるかもしれませんが、大きな問題はないように思います。というのも、私の経験上、実際に広告が表示されて収益の柱となるキーワードはせいぜい100個程度に収まるからです。
ちなみに、「SP広告」ではキーワードをどれだけ追加して問題ないのですが、「SB広告」では関連性の低いキーワードを追加しすぎると、配信されづらくなる印象があります。そのため私は、SP広告ではキーワードを積極的に追加し、SB広告はキーワードを厳選して追加する、というオペレーションをおこなっています。
※いずれも、21年12月時点の個人的な所感です。
続いてキーワード設定の考え方を以下にご紹介します。
自社キーワード
広告を配信する商品の名前をターゲティングする設定です。いわゆる指名キーワードですね。
自社キーワードの一番の魅力は高いROASを期待できることですが、加えて、「自社キーワードでの競合商品の広告露出を防ぐ」というディフェンスの役割も大きいです。
ただし、Amazonでは、基本的には検索した商品はオーガニックで表示されるはずなので、本当に意味のある露出なのか?という点については、競合の露出状況を見つつ判断することが重要です。
汎用キーワード
文字通り、汎用的なキーワードを対象に広告を配信します。自社キーワードと比較するとROASは低くなりますが、配信ポテンシャルが圧倒的に大きく、収益貢献の柱と言えます。
競合キーワード
競合製品に広告を露出させるターゲティングです。ROASが低く配信量も伸びにくいですが、競合のシェアに介入するため、中長期的な観点から重要な施策となります。
カテゴリー
商品の性質からターゲティングをする設定です。「本」「家電」「日用品」といった大カテゴリーから、「小学生の雑誌」「ハンマードリル」「粉末洗剤」のような小カテゴリーまで、自由度の高いターゲティングが可能です。
汎用キーワードよりもROASが高いが、配信量は少なめ、という特徴があります。他のターゲティングと比較すると十分な配信量を期待できるのですが、汎用キーワードのポテンシャルほどではない、という所感です。そのため、あくまで効率を重視しつつ検討層へアプローチしたい際に使用するのがよいかと思います。
また、カテゴリーターゲティングではできるだけ小カテゴリーでの設定をおすすめします。私の方書簡では、小カテゴリーに設定した方が配信量が伸びやすく、入札調整を細かくできるため、ROASが向上しやすいです。例えば、「アタック」であれば、「洗濯・仕上げ剤」で設定するより「液体洗剤」「粉末洗剤」「液体柔軟剤」...と設定する方が、配信効率が高いです。
ちなみに、自社の製品をターゲットから除外登録しておかないと、自社製品に配信が偏りがちなので注意です。(上述の通り、自社製品に配信するだけだと広告費の無駄遣いになる可能性があります)
下図が実際のカテゴリー選択画面です。
ASIN
ASINとは、Amazonに登録されている商品番号を指し、商品単位でのターゲティングが可能です。競合のASINをターゲティング設定し運用することもできます。
このターゲティングの特徴として、競合キーワードよりもROASが高めだが、配信量は少ない、という点が挙げられます。汎用キーワードとカテゴリーターゲティングの関係と同じですね。
ちなみにASINは該当の商品詳細ページから確認することができます。
オーディエンス
SD広告のみで利用できる特殊なターゲティングです。近年追加されたばかりの比較的新しい機能です。
Amazonでの購買行動を参照したターゲティングのため、他のプラットフォームと比較すると、Cookie等のトラッキング規制の影響を受けていない点が強みと言えるかもしれません。
ターゲット方法は多岐に渡るため、かいつまんでご紹介します。
閲覧リマーケティング
特定のカテゴリー・商品を過去30日以内に閲覧したユーザーをターゲティングします。カテゴリーは上述した内容で、商品は「①広告の商品」、「②広告に類似する商品」という粒度で選択することができます。SD広告の中でも、比較的高いROASを期待できます。
オーディエンス
過去の購買記録を参考に、特定のユーザー層へアプローチできる設定です。利用してみた所感としては、配信量が伸びにくくROASも低いため、やや使う場面が難しいと感じています。SD広告は、Amazon広告の中でも注力されている分野であるのため、今後のアップデートに期待です。
オーディエンスには大きく4つの区分があり、それぞれ以下の特徴があります。
ライフスタイル:ショッピング行動やストリーミング行動が、特定のライフスタイルの好みや親近感を示唆しているオーディエンス。(例:外国語を勉強している人、過去90日に初めて洗剤を購入した人)
興味:ショッピング活動が、特定のカテゴリーへの継続的な関心を示唆しているオーディエンス。(例:ランニング好きな人、猫好きな人)
ライフイベント:直近1ヶ月・3ヶ月以内に引っ越しをしたユーザー。(現在は「引っ越し」しか設定できませんが、今後は他にも追加されると想定されます)
インマーケット:最近の活動が、特定のカテゴリーで商品を購入する可能性が高いことを示唆しているオーディエンス。(例:カメラ用レンズフィルターの購買意向が高そうなユーザー)
自動
ターゲティングを完全に自動化させる設定です。キャンペーンを作成したいけれど、どのキーワード・商品と相性がいいのかわからない、といった場合に使用します。
「ほぼ一致」「大まかな一致」「補完商品」「代替商品」という粒度で設定が可能で、様々な広告枠で露出されます。配信量は伸びにくいがROASが高く、追加のターゲティング候補を発掘できる補助的な設定と言えます。
「アタック」の例で考えてみると、自動設定で配信した結果、「洗濯のり」「粉末漂白剤」だとROASが高いことが分かり、これを参考に他キャンペーンの補強をおこなうことができる..といった感じでしょうか。
ターゲティングまとめ
以上がターゲティングの紹介でした。それぞれの特徴をまとめると以下の通りとなります。
また、上述の「広告タイプ」と組み合わせると、対応表は以下の通りです。
小ネタ
体系的にまとめるのは難しいのですが、知ってるとどこかで役に立つかも…?という情報を、こちらに記載しておきます。
入稿でつまづきやすいポイント
Google 広告等のプラットフォームと同様に、Amazon広告にも細かな入稿規定があります。厳密な規定は、媒体のヘルプを参照いただければと思いますが、経験上、特につまずきやすいと感じる入稿規定を2つご紹介したいと思います。
- 参考:Amazon広告ヘルプページ
新製品の訴求
広告の見出し文に「新製品である旨を記載する」場合は以下の点を注意する必要があります。
- SB広告の場合見出し:発売年月の記載が必須
- 飛び先(Store、商品詳細ページ):必須ではないが、発売年月の追記を推奨
- Store、SBV、SD広告の場合見出し:制限なし(※見出しがないケースもあるストアページ内[動画内、見出し] or 商品詳細ページのいずれかに発売年月の記載があればOK)
※全ての広告において、商品の発売・発表後6か月を超えた場合は、上記の訴求は使用できない
動画広告
入稿した動画に「文字」が入っていて、それが動画の音声ON/OFFボタンと重複している場合は、審査を通過できません。
広告が配信されないときのコツ
入稿が完了した広告が、まったく配信されない減少に遭遇することがあります。そうしたケースでは以下の2つの対処法を検討してみます。
- とにかく入札額を引き上げる:ある程度の入札額まで引き上げると突然露出が増え、学習が進む場合があります。思わぬ配信額の増加に注意です。
- 再入稿する:同じ内容で再度入稿すると露出が自然と出てくることがあります。
経験上、広告が配信されないトラブルは特にSB・SD広告で起きることが多かったです。
競合に露出で勝ちたいときのコツ
自社が露出したいキーワードに対して、競合製品ばかりが露出していて、入札額を少し引き上げたところでシェアを奪うことできずROASが低下する一方…、という経験をされたことがあるかもしれません。
そんな時は、短期的に大きく強化することで、競合のシェアを奪える可能性があります。
私は過去に、シェアを奪いたいキーワードがあったとき、数日間(2~5日ほど)入札を急激に強化します。一定まで入札を強化すると、競合のシェアを奪うことができ、該当のキーワードへの露出が増加します。そして、数日間シェアを奪った状態で配信を継続すると、広告の学習が蓄積し、入札額を低く戻してもシェアを維持できるケースがあります。
こうした戦略はSP広告では特に有効かと思います。